金融緩和で、一番ダメージを負ったのは誰?
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2018年夏、日銀の金融緩和が、そろそろ限界に来ているという記事が増えてきた。
日銀が金融緩和の見直しを考えているらしいと言うニュースも出た。
日銀側からそれを否定する発言も出ないので、恐らく近いうちに金融緩和のあり方に変化があるだろう。
5年以上も異次元の金融緩和なるモノを行ったのに、当初2年ぐらいで到達できるとしていた「インフレ率2%達成」は、5年経っても達成されない。
政府は景気が良くなって失業率が下がったと言うが、賃金上昇は続かず、労働コストの上昇で中小企業の経営も怪しい状態が続く。
それを反映してか、地方銀行の業務収益(64行合計)は、民主党政権時の1兆3,000億円台後半から、2017年には1兆円を割るところまで悪化している。
地方銀行の業績推移(2008-2017)
※2009年リーマンショック、2011年東日本大震災。
2013年からアベノミクス、2016年マイナス金利導入。
その大きな原因は、皮肉にも異次元の金融緩和政策とマイナス金利政策だ。
異次元の金融緩和政策で、日銀は日本国債を毎年数十兆円規模で(高値で)買い入れた。
これによって国債の価格は高騰して、利回り(金利)は下がった。
金利が下がったら、企業は資金調達コストが下がるので、銀行から資金を借りてバンバン投資を行うだろう、と思いきや、銀行はあまり融資を増やせなかった。
というのも銀行は、貸し倒れリスクを計算して貸出金利を決めざるを得ないので、これ以上は不可能なところまでしか金利を下げられないからだ。
お金を貸したはいいが大して儲からないし、貸した先が倒産した場合のリスクの方がデカいなら、危なくて貸せないもんね。
ただでさえ融資の収益率を下げられているのに、リスクを取れるワケがない。
地方銀行は、異次元の金融緩和が続いたことで、国債という安全な運用先を失ない、収益源を一つ失った。
さらに日銀が取ったマイナス金利政策によって、銀行は収益源をもう一つ失った。
つまりアベノミクスの金融緩和とマイナス金利政策によって、地方銀行は疲弊してしまったわけだね。
マイナス金利政策導入によって銀行株が暴落して、地方銀行が青息吐息になったことにようやく気づいた日銀は、見境無く国債を買い入れる金融緩和を諦めた。
イールドカーブコントロールという、耳慣れない言葉を出してきて、短期国債はゼロからマイナスに、中長期国債はプラスに保つように買い入れを行うという調整策を出してきたわけだね。
金融緩和軟化で、騰がる株・下がる株
一方、日本株ETF購入に関しても、方針転換がウワサされている。
というのも日経平均が2万2,000円という高値をとっているのに、日銀が買い支える必要があるのか?という議論だ。
そもそも株価を高値に維持したからと言って、インフレにはほとんど関係ない。
また高値にずっと居続けているため、投資家にとっては、あまり儲かる市場でもなくなった。
相場というのは、大きく上がったり下がったりしてボラ(ボラリティ)が大きいからこそ利益が出るのであって、高値を買い支えてもあまり意味は無い。
ただ、いきなりETF購入額を減らすと宣言すると、株価が暴落しかねないため、やり方を変えるのではないかと予想されている。
有力視されているのが、日経平均連動型ETFの購入を減らして、TOPIX連動型ETF購入を増やす方法だ。
日本の株式市場は、NT倍率が13倍に近付き、ゆがみが大きくなっているのは確かだし。
では、買い入れ比重の変更が行われた場合、どういう銘柄が上がって、どういう銘柄が下がるのか?
まず、株価は低いが時価総額がデカい銀行株は、買い戻されやすくなる。
逆に日経225平均の値がさ株で、時価総額が小さな銘柄は買われにくくなる。
具体的な銘柄としては、次のような感じになるらしい。
買い入れが増える銘柄 | トヨタ、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、NTT、キーエンス、任天堂、村田製作所、など。 |
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買い入れが減る銘柄 | ファーストリテイリング(ユニクロ)、ソフトバンクグループ、ファナック、東京エレクトロン、KDDI、京セラ、TDK、など。 |
あまり変化がない銘柄 | ソニー、ホンダ、など。 |
任天堂は3万円前後の値がさ株だけど、実は日経平均225銘柄に入っていないので、日銀のTOPIX型ETF購入が増えると恩恵が増えるようだ。