地方銀行の収益の推移
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マイナス金利政策導入以降、地方銀行が疲弊しているというニュースはよく聞く。
でもその実体とは一体何か、もう少し詳しく調べて見る。
まず地方銀行の業績の中心となるのは、「業務純益」という指標だ。
業務純益は銀行の投融資による損益のことで、銀行本来の業務による稼ぎを言う。
一般企業では「営業利益」と呼んでいるのが、これだ。
そしてこの業務純益は、大きく分けて二つに分かれる。
それが
- コア業務純益
- 国債等債券関係損益
という2つだ。
コア業務純益とは、一般企業への融資や住宅ローン融資の利子収入から諸経費を差し引いたモノだ。
一方、国債等債券関係損益とは、その名の通り、国債や債券によって得た利益や損失のことだ。
前者は融資による利益で、後者は投資による利益ってことだね。
これをグラフで表すと、次のようになっている。
地方銀行の業務純益の内訳 (2008-2017 64行合計)
もう少し詳しく見てみる。
2016年1月末のマイナス金利政策導入前の業績は、2015年度以前になる。
つまりマイナス金利政策導入後の影響は、2016年度以降に現れるので、2016年度の業務純益に注目する。
地方銀行 [64行合計] の業績の推移(2014-2017)
単位:億円 | 業務純益(コア+債券) | 当期純利益 | コア業務純益 | 国債等債券関係損益 |
2014年度 | 12,817 | 8,211 | 12,128 | 578 |
2015年度 | 12,702 | 9,403 | 12,191 | 504 |
2016年度 | 10,348 | 7,954 | 10,660 | -467 |
2017年度 | 9,463 | 7,838 | 10,887 | -1,067 |
※全国地方銀行協会HPより作成
これを見ると、2016年度のコア業務純益は、前年度と比べて、約1,500億円のダウンになっている。
さらに国債や債券による損益は、プラス500億円からマイナス500億円と、約1,000億円のマイナスになっている。
これによって、なんと18%以上の減益になっているのだ。
個々の銀行がそれぞれの事情で20%近い減益になることは珍しくもなんともない。
しかし64の銀行の合計で18%も減益となると、これはただ事ではない。
一体何が起こっているのか?というと、日銀のマイナス金利政策の影響で市中金利が低下して、貸出金利が下がった影響だと言われている。
そしてもう一つが、金融緩和の名目で国債を日銀が買い占めてしまったため、銀行が日本国債を安く買えず、外国債で損失を出しているということだ。
2018年現在、アメリカの長期金利(10年物国債の利回り)は3%前後まで上昇しているが、これはアメリカ国債の値段が下がっていることを意味する。
そのため、アメリカ国債を大量に買っていた銀行は、評価損(含み損)を山ほど抱えてしまったらしい。
債券の場合は、市中で売却するなり、満期が来ない限り損失が確定しないのだが、それでも既にマイナスになっているのは、かなり怖い状態かも知れないね。